韓国で最も注目されている人気絵本作家の一人、ペク・ヒナさんをご存知ですか?
2018年に発売された「あめだま」が、韓国では発売から1年間で10万部を超す大ヒット。
日本でもすぐに翻訳され、書店に並んだ表紙に映るクレイ人形の少年のインパクト大のビジュアルでも話題になりました。
2020年には絵本界のノーベル賞とも言われるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞し、もはや世界的な作家として飛ぶ鳥を落とす勢い。
今回はそんな韓国の人気絵本作家ペクヒナさんについて、どういう人物なのか、なぜあんなにも独創的な表現方法なのかを徹底調査しました。
作品毎に発表されれるプロモーションビデオ(メイキング映像付き)だけで、その作品性の高さに目を奪われ、触りのストーリーだけで涙する人が続出していますので、そちらも合わせてご紹介していきますね。
韓国絵本作家として有名なペクヒナ - プロフィールや人柄、受賞歴は?
では早速、ペク・ヒナさんのプロフィールをご紹介します。
韓国絵本作家「ペクヒナ」プロフィール
自称「人形いたずら作家」。
1971年に韓国ソウル生まれ、2024年現在は53歳で2児の母親、ポメラニアンのムンチとご主人と暮らしています。
韓国・梨花女子大卒業後、アメリカのカリフォルニア芸術大学でアニメーションを学んでいたそうです。
卒業後すぐに絵本作家になったわけではなく、アニメーターとしてアメリカで働いたり、子供向けテレビ番組を制作していた時期も。
独特のファンタジー世界、オリジナリティあふれる人形作りや緻密なセットの構築、そして撮影までを一人でこなすその技量は、彼女の辿ってきた軌跡により生み出されているんですね。
韓国絵本作家「ペクヒナ」人柄は?
穏やかで、美しい女性という印象のペク・ヒナさん。
「あめだま」という作品を制作していた際には、あるシーンで思わず自分自身で涙を流しながら制作していたという、感情豊かな方。
その一方で、日本で以前開催されたトークショーでお客さんから「天女銭湯に出てきた、天女の体がお風呂の中で波打つ躍動感が素晴らしい。何を参考にしたのですか?」という質問が出た際は
「私自身の体を見て描いたから、そんなに難しくなかったわ」とチャーミングに答える一面も。
韓国絵本作家「ペクヒナ」受賞歴
2020年に受賞したアストリッド・リンドグレーン記念文学賞が注目されていますが、ペク・ヒナさんはこれまでにさまざまな賞を受賞されています。
2005年 ボローニャ国際児童図書展 年間最優秀作家 - 『あめだま』
2012年 第53回韓国出版文化賞(英語版) - 『天女銭湯』
2013年 第3回昌原児童文学賞 - 『天女銭湯』
2018年 第11回MOE絵本屋さん大賞 6位 - 『あめだま』
2019年 第24回日本絵本賞 翻訳絵本賞および読者賞 - 『あめだま』
2020年 アストリッド・リンドグレーン記念文学賞 (ALMA)
冒頭でもご紹介した、 アストリッド・リンドグレーン記念文学賞 (ALMA)は、児童文学、 青少年向けの文学作品に与えられるスウェーデン政府の主催の文学賞。
2002年にスウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーンを記念して設けられ、毎年選考の末1人に与えられます。
賞金は500万スウェーデン・クローナ( 日本円で5,000万円を超える)と高額で、"絵本界のノーベル賞"とも呼ばれています。
韓国絵本作家で有名なペクヒナ - 翻訳絵本5選
これまでに13冊の絵本を発表し、その多くはアジアを中心に翻訳出版されています。
今回は、日本語に翻訳されている本の中から筆者がおすすめの5冊をご紹介。
プロモーションビデオや制作背景の映像も合わせてお楽しみください。
ペクヒナ韓国絵本『天女銭湯』-心温まる一冊
少女・ドッチのすむ町には、ふるーい銭湯があります。ともだちはみんな、新しいスパランドに行くけれど、ドッチは、大好きな水風呂と、あかすりのあとに買ってもらえるヤクルトをたのしみに、きょうも長寿湯にかよいます。いぬかきしたり、水泳選手の真似をしたり、水風呂で遊んでいると...「なんや、このばあちゃん どっからでてきたん!」 はごろもをなくしたという、天女があらわれた!
ビジュアルインパクトが凄すぎて「ちょっと好みじゃない」と思ってしまった方も、是非一度最後まで読んでほしいです。
面白いだけではなく、最後はほっこり、心が温かくなりますよ。
プロモーションビデオはこちら。
ペクヒナ韓国絵本『天女かあさん』 - 働くお母さんに刺さる一冊
大雨のある日。仕事中のかあさんのもとに、息子のホホが熱をだして、学校を早引きしたという知らせが。だれかにホホのことを頼もうと、あちこち電話をかけますが、つながりません。途方に暮れているところ、やっとつながった電話の先は、なんと天女さまで......。
「天女銭湯」の続編。
働くお母さんに響く一冊、物語の舞台はペクヒナさんのいるソウルですが、日本のお母さんとまるで変わりません。
ペクヒナ韓国絵本『あめだま』 -泣ける一冊
ひとりぼっちの少年ドンドンが見つけた、6つのふしぎなあめだま。部屋で1つ食べると、「リモコンがはさまって痛い!」とソファの声が聞こえてきた! もう1つ食べると、今度は犬のグスリが話しはじめて......。少年の成長をえがいた心あたたまる物語。
ペクヒナさんも自分で制作している時、そして完成後に目を通した時、パパとおばあちゃんのシーンでは、嗚咽をあげて泣いてしまったという一冊。
「ひとりでもいいんだ」と強がっていた少年が、様々な声により、人の心に触れていく物語。
昔の自分、お子さんのいる方なら、自分のお子さんと重ね合わせ、心にじんわりくるものがあります。
最後の落ち葉のシーンは、美しく圧巻、新しい彼の未来に優しい光がさしたようです。
本当に光の映し出し方が圧倒的なペク・ヒナさんの世界観に目が離せません。
韓国絵本『お月さんのシャーベット』 - 切り絵が魅力の一冊
真夏の夜のこと――えらいこっちゃ、お月さん、とけてはるがな。暑くて暑くてねぐるしい夜、どの部屋も窓をしめて、エアコンびゅんびゅん、扇風機ぶんぶん。あまりにも暑すぎて、ついに、お月さんがとけだした。おばあさんはたらいにしずくをうけとめ、ひんやりあま~いシャーベットをつくります。
これまでのクレイストップモーションとは違い、ミニチュアセットに切り絵をプラスした新しい手法。
ここに出てくるお月様とそれが「ぽた・・・ぽた・・・」と垂れてくるシーン、そしてシャーベットのなんとも美しいこと、我が家の2歳児はこの本が大好きで、月をつかんではよく食べる真似をしています。
メイキングビデオはこちら、不思議な世界の作り方を垣間見れます。
韓国絵本『ゆめのごちそう』 - 2024年発売の最新作
こちらは、ブロンズ新社から2024年4月11日に全国の書店で発売される、ペクヒナの最新作『ゆめのごちそう』(長谷川義史訳)。
2014年に韓国で初めて発表され、カエルの兄とオタマジャクシの兄弟の家族愛をテーマにした作品。読者は、大人たちが仕事で家を留守にしている間、兄弟の面倒を見る“兄カエル”の奮闘を追体験できます。沢山の兄弟の面倒をみて、へとへとになったにいちゃんカエルがみたゆめとは!?
本作では、遠近感や水辺の湿り気を表現するために、アニメのアナログ製作のセル画を何層も重ねて撮影するという新たな方法が使われています。
水辺の草木の奥行きや背景の美しさが見事に再現され、かえるたちの過ごす湿度感まで伝わってきます。
ペクヒナ韓国の有名絵本作家って誰?『あめだま』から最新作までおすすめ5選!まとめ
ここまで、韓国で、そして今や世界で人気を集める絵本作家ペクヒナさんの素顔に迫ってまいりました。
独特の表現を心ゆくままに追求し、そしてどこか懐かしく、どこか切ない、そんな物語を綴るペクヒナさん。
プロモーションビデオに移された制作シーンでは、穏やかで美しいお顔立ちの裏に秘められた作品づくりへの徹底したこだわりと、まるで映画でもとっているかのような綿密な構成に圧倒させられます。
人気作品「あめだま」や「天女銭湯」だけではなく、新しい表現の「お月さんのシャーベット」も手元にぜひ置いていただきたい作品。
ちなみに、ペク・ヒナ作品は全て長谷川義史さんによる翻訳で、全て大阪弁で表現されているのですがそれもまた絶妙にマッチしていてたまりません。